10147人が本棚に入れています
本棚に追加
「目的の深度で水平にするためにはメインバラストタンクに必要なエアを送り込み浮力を調整する必要があります。そうしないとドンドン沈みます。更にその深度を維持して真っ直ぐ水平航行するためには時々刻々変化する海水密度に合わせてこの浮力を調整し続ける必要があります」
「波の影響もあるんですか?」
貴堂はそう尋ねた。
キャプテンは笑って頷く。
「そうですね。海流の影響はありますね。流されて向きや方角が分からなくなっちゃうかもしれませんね」
突然の貴堂の質問とキャプテンの回答にえっ!?という空気が流れる。
「大丈夫なんですか?」
女性同士で来ていたグループからも質問が出た。
「大丈夫です。方角は計器でも把握していますから。人の感覚だけでは当てにならないかもしれませんが、それを補うための計器がこれだけありますからね」
そうして潜水艦の中は和気藹々とした空気になり、みんなもキャプテンに質問したり、キャプテンもそれに楽しそうに答えを返したりしていた。
その後は二人で海の中を見てカラフルな魚たちや綺麗な珊瑚に感嘆の声を上げたり、微笑み合ったりしたのだ。
紬希には初めてのことばかりでとても幸せな気持ちになった。
浮上したら貴堂はキャプテンに声を掛けられる。
「ありがとうございます。おかげで楽しい雰囲気になりました」
最初のコメントを投稿しよう!