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どきん、としたけれど貴堂はその表情を出さないように努めて冷静な顔を見せた。
「いや、特にはないな」
「では、連絡しておきますので、差し支えなかったら、彼女にご連絡していただいてもよろしいでしょうか?」
「いいのか?」
花小路は貴堂を真っ直ぐ見つめた。
「ダメだという理由はありません」
本当なのだろうか?
「シャツを作るためにサイズを測るのは必要なことですから」
「分かった。ではこの休暇中に連絡を取ってお願いすることにしよう」
花小路は胸ポケットから携帯を出して、何か操作をしている。
「今、連絡先をお送りしました。よろしくお願いいたします」
機乗の前で時間がないこともあり必要なことを伝えたら、頭を下げて花小路はその場を去った。
その表情からは貴堂は何かを読み取ることは出来なかった。
着替えた貴堂は駐車場に向かい、携帯を確認する。花小路からのメッセージが届いていた。
連絡先はメールアドレスだ。
このメールアドレスがあの彼女のものだということなんだろう。
少し考えて、貴堂は文章を入力していき、最後に送信を押した。
そうして、ドライブモードに切り替え、カバンの中に携帯を放り込む。ハンドルを握りエンジンをかけた。
空港から自宅に向かう高速道路は空いていて、その真っ直ぐな道を心地よく車を走らせて行く。
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