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メールに着信があったのは、自宅に戻った貴堂が食事を終え、シャワーも浴びくつろいでいる時だった。
とても丁寧な、この度はご注文いただき、ありがとうございます、というお礼のあとに心地よいシャツを作るためにサイズを測らせてほしい、ということが書かれてある。
最後に『三嶋紬希』と署名があって、こんな字を書くのか、と貴堂は納得した。
サイズを測ることは了承したこと、そして都合の良い日時、無理を言っていないかなどを入力して送信する。
日にちと時間の確認、そして無理は言っていないので、是非お作りさせて頂きたいという文言も入った彼女らしい返事を見て、貴堂は口元が緩んでしまっていることに気づいてはいなかった。
翌日、貴堂は私服のチャコールグレーのカジュアルなシャツと白のデニムパンツを合わせて、ワンショルダーのバッグを持ち、車で彼女の作業場に行くことにした。
作業場は自宅の2階にあるとのことである。
指定された住所は本当にごく普通の住宅地で、近くのコインパーキングに車を停め、地図アプリを使って指定された住所に向かう。
『三嶋』と書かれた表札の家の横に2階に向かう階段があり、そこに『三嶋シャツ』という小さな看板を見つけた。
作業場に向かう階段は、まくら木でデザインされており、そのぬくもりのある雰囲気が可愛らしいデザインだ。
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