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階段を上がると木とガラスでできたドアがある。カフェとも間違えそうな感じだ。ドアの向こうにはうっすらと人影が見えていた。
あの人影が彼女なのかと思うと、貴堂は妙に緊張してきてしまったのだ。
貴堂はふう……と大きく息を吸ってドアの横についている呼び鈴を押した。
ピンポン、と中で音がするのが聞こえる。
「はあい」
軽やかな声が聞こえて、ドアが開いた。カランコロン、と軽やかなドアベルの音がする。
「いらっしゃいませ」
柔らかい笑顔が自分を迎えてくれて、貴堂は先ほどまでの緊張がほどけていくのが分かった。
「あ……開いてたんですね」
「はい。普段は閉めているのですけれど、お客様がいらっしゃるときだけ開けているんです」
紬希の照れたような顔がとても好ましい。
ああ、やはり綺麗な人だ、と貴堂は改めて感じる。
透けそうに白い肌と、綺麗な瞳。華奢で、貴堂とは身長差があるので、きゅっとしたら腕の中にすっぽりと収まってしまいそうだ。
つい、見つめてしまいそうになるのを貴堂は意志でもって引き離す。
そして、作業場の中に目を向けた。
大きな窓からは日光がたっぷり入ってくる、とても日当たりの良い作業場だった。
いろんな布や糸が壁にびっしりおいてあるけれど、それはカラーごとに分けておいてあるので、乱雑さは感じない。
部屋の中ほどにトルソーと言うのかマネキンの上半身があり、それにはシャツが着せられていた。
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