1.太陽と王子

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 通常なら乗務が終わったら真っ直ぐ帰る貴堂なのだが、たまに帰り際にデッキに出て離発着する機体を眺める事があった。  何か考えることもあるし、頭を真っ白にして、ただ見ていることもあった。  飛行機が大好きなのだ。  その離発着はどれだけ見ていても飽きることはない。オフの時まで仕事のことを考えたくない、という人もいるのかもしれないが、貴堂に限ってはそれはなかった。  この日もデブリーフィングと呼ばれる到着後の打ち合わせを終え、着替えてデッキに寄ろうと足を向けた。  そのデッキの少し物陰になっているところで、先程まで一緒に乗務していたコーパイ、副操縦士の花小路(はなこうじ)の姿が目に入ったのである。  やはり花小路も飛行機が本当に好きなんだな、と嬉しくなった。  花小路雪真(はなこうじゆきまさ)『花王子』とも呼ばれている彼は、貴堂とはまた全く違う美形で、そのふわりとした髪が風に煽られる姿すら絵になる。  冷たいくらいに整った美貌に、誰に声をかけられても相手にしないところから『氷の王子』の別名があるくらいだ。  そんな花小路に声をかけようと思ったら、彼の目の前には女性の姿が見えた。  待ち合わせだったのか……と貴堂は声をかけるのを止めたのだ。 「雪ちゃん、お疲れ様」 「紬希(つむぎ)」  雪真、だから雪ちゃん。  その声と親しげな呼び方に貴堂はドキッとした。
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