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紬希はいつもならこんなことは人には話さない。けれども、貴堂の持つ雰囲気とその穏やかな声に、急に聞いてほしいような気持ちになったのだ。
「怖くて……。お出かけしても、誰かに見られているような気がするのが、怖いんです」
それはあなたが綺麗だからだと言いたいけれど、そんなことでは解決しないような気がして、貴堂は言葉を発することが出来なかった。
「でも誰かに見られているかも、なんて言ったら『自意識過剰なのだ』って言われてしまうんじゃないかって」
それは、紬希が自分で思っていることではないのではないかと貴堂は察した。
「誰かに言われた?」
こくん、と紬希は頷く。
「学校に行っていた時も、社会人になってからも。服が好きで、アパレルの会社に就職したんですけど、私はこんな風なので店頭に出ることはできなくて、内務に配属になったんです。そこで面倒を見てくれていた先輩がいたんですけど」
貴堂は紬希の肘をそっと取って、椅子に座らせた。
そして作業台の奥から自分も椅子を持ってきて、紬希の前に座る。
そして、紬希に向かって首を傾げた。紬希はぼんやりとその様子を見ている。
「うん。聞かせてくれる?」
また、こくり、と紬希は頷いた。
「その人に見られているような気がしていました。周りの人に言ってもなかなか分かってもらえなくて」
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