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挙句にそんなことを言い出すなんて『自意識過剰ではないか』と言い出す人がいたらしい。
貴堂にしてみたら、本当にそいつは見ていたんだろう、と思う。
おそらくはよこしまな想いを持って。
自意識過剰なんて言い出したのは、きっとそいつなんじゃないかと推測した。
「そうしたら……怖くてっ……」
紬希の指先が震えていた。
「紬希さん」
思わず貴堂はその指を両手で掴んでしまう。
紬希がびくんとした。
「……っ、すみません。大丈夫? 無理しないで」
けれど、紬希はその手を引くことはなかった。そして握られた手をじっと見ている。
「私……触れられるのも無理なんです……」
「あ……失礼……」
慌てて貴堂はその手を離した。
紬希は顔をあげて真っ直ぐに貴堂を見る。
それはとても澄んでいて、純粋で怖いくらいに惹き込まれそうな瞳だった。
──紬希さん、そんな瞳で見ないでほしい。
「温かいんですね。貴堂さんの手、とても温かかったです」
どうやら嫌悪感はないらしい、と貴堂も察して安心した。
「無理じゃないですか?」
ふるふるっと紬希は首を横に振った。
「貴堂さんは大丈夫みたいです」
「怖くない?」
「優しいです……」
膝の上に置いている紬希の小さな手を貴堂はもう一度そっと握った。とても小さな手で、簡単に貴堂の手の平で包み込めてしまう。
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