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「こんな小さな手があんなシャツを作っているんですね。怖いなら、無理しなくていいんです。繊細なあなたのことだ、嫌なことを言われて傷ついたことでしょうね。寂しくないなら、いいんです」
紬希の大きな瞳にみるみる透明な粒が溜まってゆくのを見て、貴堂は驚いた。
「大丈夫ですか?泣かせるつもりはなかった……どうしよう、ちょっと待って」
ポケットからハンカチを出して、貴堂は紬希に渡す。
「一応アイロンもかけてありますから」
そんなことを言われるとは思っていなかったのだろう、紬希は少しだけ笑みを見せハンカチを受け取った。
一生懸命涙を拭っているのを見て、貴堂はその頭を撫でる。
傷ついても好きなことを必死で頑張ってきた紬希を思うと、ついそうしたくなったのだ。
「頑張りましたね。それでもあなたは好きなことを貫いた。だからこそ今こうして認められている。素晴らしいことだと思います」
本当にそいつはやり方を間違っていた。好意があるのならその表現の仕方を考えるべきだったのだ。
その好意を持っていた相手を蔑むようなことなど、するべきではなかった。
「あなたは何も悪くない」
紬希がさらにしゃくりあげてしまったのを見て、貴堂はその細い肩をそっと自分の方に抱き寄せた。
抱きつぶしてしまわないようにそっと優しく抱いて、ぽんぽん、とその背を落ち着かせるように叩く。
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