4.空でしか見られないもの

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「緊張している?」  貴堂からくすりと笑い声が聞こえる。 「はい……そうですね。普段はメールと専用フォームへの入力だけで完結しているので、こんな風に直接お伺いするようなことはないんです」 「貴重だね」  それが貴堂のことを指しているのか、紬希の経験のことを指しているのか紬希には、はかりかねた。  それでも確かに貴重なことではある。貴重なことだけれども、いつもと変わりないことでもある。  サイズを確認して素材を選び、デザインを選んでもらう。  そう思ったら、急に紬希の気持ちは落ち着いてきたのだ。  生地はここにあるだけではない。倉庫に保管されているものもあり、その大量の生地の中から紬希は5種類のものを選択していた。  それを作業台に広げる。 「よろしければ、触れてお選びになってみませんか?」  紬希はそう言って貴堂を見上げた。 「いいんですか?」  貴堂はとても驚いていたけれど、その瞳が好奇心で少年のようにキラキラしているのを見て、紬希は笑ってしまった。  先ほどまでその包容力で紬希をどきどきさせていたというのに。  急に子供のように無邪気に笑う貴堂は大人の男性なのに、少年のようだったから。 「あなたが急に笑うとどきりとしますね」 「え?」  そんなことを言われた紬希の方がどきりとしてしまう。
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