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「笑顔がとても可愛くて」
「そんなこと、言われたことないです」
「たくさん見たいです」
貴堂の言葉は裏表なくさらりと発せられるので、紬希はかえって警戒せずにすんなり言葉を受け取れてしまうのだ。
どきどきするけれど、困るけれど、嫌ではない。
早くなっていた鼓動がやっと落ち着いたころにそんなことを言われて、紬希は急にまたそわそわとした気分になったりしてしまう。
貴堂といることはまるでジェットコースターのようだ。
どきどきしたり、気分が急に上がったり、ふわりとしたりする。
どう対応したら良いのかわからなくて、紬希は布を手に取った。
「選んでもらってもいいですか?」
「もちろん」
なのに当の貴堂は何も気にしていないように紬希に接するのだ。
紬希もどうしていいか分からないので、その泰然とした貴堂の態度に、自分も気にしなくて良いのだと安心して布を手にするのだった。
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