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「すごいな」
「この方がイメージが湧きやすいですよね」
その生地を改めて眺めたり触れたりして、これにすると貴堂が選んだのはピンポイントオックスフォードだった。
「見た目に品があって、制服の下に着ても問題なさそうだし、実際コクピットではジャケットは脱いでしまうんだけれど、素材がしっかりしているから動きにも強そうだ。それでいてカジュアル感はないしね」
「カルゼととても迷っていらっしゃいましたね」
「うん。厚みや触れた感じはカルゼもとても気に入ったんだけどね。あれは次に持ち越しだな」
そう言って、貴堂はハッとする。
「ごめん……次もいいなんて君は一言も言っていないのに」
「いえ……もし気に入っていただけたら、次もお作りします」
その後はデザインも詳細に打ち合わせをして、実質約二時間の採寸となった。
紬希は雪真の制服を作っているので、前たてと呼ばれるボタンの部分のサイズや、襟の形については把握している。だからスムーズに決まった方ではないかと紬希は言う。
「通常はネット注文なんですけど、皆さんこんな風に迷われるってことなのかしら」
「迷うんじゃないかな。そもそも三嶋シャツ自体が受付をしている期間が限られているとネットで見たよ」
『三嶋シャツ』は一度に二枚まで注文を受け付けている。
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