5.お姫様を連れ出す王子様は?

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 最初は一枚でもその良さに、次は二枚と頼むリピーターも多く、紬希が一人で作成しているので、自然請けられる数に限りがあるのだ。  その手が空きそうな時だけ、新規の受付をすることにしていた。  それは全くもって紬希側の事情だったのだけれど、入手困難な手縫いのシャツ、として『三嶋シャツ』の名前を上げることになってしまったのである。 「そうですね、確かに新規ではあまり受け付けていないかも」 「やっと予約できた憧れのシャツで、さあ、どんなものにしますか?と言われたらそれは迷うだろう。僕は運がいいよ。君に直接こんな風に説明して選んでもらっている。君のファンのお客様からしたら、とんでもない贅沢だし、怒られてしまいそうだ」 「そんなこと、ありませんよ」  くすくすと紬希は笑った。  謙遜しているけれど、紬希のシャツに対する意識に触れたら、きっと誰もがそう思うはずだ。  それは、常に仕事に対するプロ意識を忘れることはない貴堂だからこそ共感できることである。 「いや、きっとそうだよ。羨ましがられそうだ」  そう言って、貴堂は紬希に向き直る。 「ありがとう、紬希さん。僕のシャツを作ることを引き受けてくれて、感謝する。なにかお礼がしたいな」 「え?だってお仕事ですもの……」 「それでも、何かしたい」  紬希は少し考えた。 「あの……ではお忙しいとは思うのですが、仮縫いをさせて頂くことは可能ですか?」
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