5.お姫様を連れ出す王子様は?

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「紬希さん、苦手な食べ物はある?」 「ないです」 「エビとアボカドとローストビーフとサラダは平気?」  ずいぶん具体的な質問だ。 「大好きです」 「よし、じゃあそれにしよう」  車内のパネルに貴堂が手を触れると電話のコール音が聞こえた。 『はい。ル・ブランシェです』 「あ、貴堂です」 『貴堂様、いつもありがとうございます。ご予約ですか?』 「いや、テイクアウトをお願いしたくて。サンドウィッチを2人分、エビとロービーで。あと何かデザートはありますか?」  タッチパネルから直接電話ができるようなのだが、通話中の声が車内に聞こえているのだ。  オープンな貴堂には紬希は戸惑ってしまう。  貴堂はそんなことも慣れた様子で会話の内容を聞かれることなど、全く気にしていないようだ。 『……そうですね、テイクアウトでしたら、エクレアではいかがでしょうか?』 「紬希さん、エクレアは食べれらる?」  こくこくっ、と紬希は頷いている。一生懸命気配を消そうとしているのが可愛らしい。 「では、それで。あとコーヒーは飲めるかな?」  また紬希はこくこく、頷いている。  あまりの可愛らしさに、つい貴堂はポンポンと頭を撫でてしまった。 「コーヒー2人分も」 『お連れ様がご一緒なんですね?』  笑いを含んだ声に貴堂は心の中で余計なことは言うなよ?とつぶやく。  電話に出ていたのは、ベテランの受付担当者だったので、さすがに何か余計なことを言うこともなく、何分後にご到着ですか?と尋ねてきた。
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