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20分後に……と打ち合わせをして電話を切った。
ふふっ、と貴堂は笑い声を漏らす。
「大丈夫ですよ? 話しても」
「……なんか、失礼があってはいけないと思いまして」
「聞かれて困るような話はしないです。仕事でもないから多少の失礼があっても大丈夫ですよ」
兄への挨拶でも、今の電話でも落ち着いていて、いつも自然体の貴堂が紬希には眩しく見えた。
「今のお店はね、本当はフレンチのお店なんですけど、サンドウィッチが美味しくて、たまにお願いするんですよ」
「そうなんですね」
だから、お店の人とも慣れたやり取りだったのだろう。
「紬希さん、仮縫いもあると言っていましたよね?いつくらいがいいですか?」
「あ……1週間から10日くらいで」
貴堂は少し考える風だった。
「後で勤務を確認します」
仕事も忙しそうでオフも充実していそうな貴堂の時間をもらうのはなんだか申し訳ないような気がしてきた紬希は、口を開いた。
「貴堂さん、あの……無理なら……」
「無理なわけない。こちらからお願いしたことだし、紬希さんは最高のパフォーマンスをするために提案してくれたのではないんですか?」
責めるでもなく、するりとそう言われて、その通りだと紬希は俯いた。
「僕はあなたをプロフェッショナルとして認めています。あなたはもっと自信を持っていいですよ」
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