6.交際とはどういうものかしら

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 1人で泣かなくてもいいことがこんなにも心を無防備にしてしまうのだと紬希は知らなかったから。  いったん気持ちを許してしまったら、心までも簡単に無防備になってしまうことも。 「紬希さんは泣き虫なの?」 「……そ、んなことはないと思うんですけど」 「では僕の前だけ?」  そうかも知れない。けれど、会ったばかりの人にこんな風になってしまうことはおかしくはないだろうか? 「それだったら、嬉しいんだけどな」 「嬉しい……ですか?」  困るのかと思ったけれど。 「嬉しいよ。好意を持っている人から甘えられることは嬉しい。まして泣き顔なんて、相当に信頼していないと見せられないだろう。自然に出てしまったものでも、かえってそれが嬉しいよ」 『好意を持っている』  運転をしながら、それでも嬉しそうに貴堂がそんな風に言ってくれることが、紬希にも嬉しかった。  そこからレストランに車を停めた貴堂は、紬希に車の中で待っているように言って車を降り、大きな白い紙袋の手提げを持って戻ってきた。 「では行きましょうか?」  そう言う貴堂はとても楽しそうに車のエンジンをかける。 「どこにですか?」 「楽しみにしていて? 大丈夫。怖い思いはさせないから」 レストランから15分ほど車を走らせて、到着した先は公園だった。 「公園?」 「たまに来るんですよ」
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