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「お子さんと?」
公園と言われれば子供がいるかと思うから。
「違います。先に言っておくけど、僕には婚姻歴はありません」
きっぱりと貴堂はそう言い切る。
「はい」
きょとん、と紬希は貴堂を見返した。
じゃあ私はどうですか? とならないところがこの子のいいところなんだなあと貴堂は笑みが浮かんでしまうのを抑えることが出来なかった。
紬希を車から降ろし、後部座席からランチの入った紙袋を取り出す。
そしてこの公園に来るときの必須アイテムであるレジャーシートを車の後ろから取り出した。
「あのっ、私も持ちます!」
紬希は慌てた様子で貴堂に声を掛けてくる。
何も任せないことはかえって信頼していないように感じることがあると、貴堂は知っている。
だから、にこりと笑ってくるんと丸まっているレジャーシートを紬希に渡すことにした。
フリース素材の軽くて持ちやすいものだ。これくらいならば、紬希も受け取ってくれるだろうと予想して。
「では、お願いできますか?」
そう言って、貴堂は紬希にレジャーシートを渡す。
「はい!」
案の定、良いお返事をした紬希は貴堂から嬉しそうにレジャーシートを受け取った。
貴堂は紙袋に入ったサンドウィッチを持ちあげた。2人分のサンドウィッチとデザートと飲み物はなかなかに持ち重りのするものだ。
「行きましょうか。足もとが悪いし、迷子になってもいけないから、手をどうぞ」
──迷子……?
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