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貴堂はレジャーシートを敷いてサンドウィッチの準備をする。
はしゃいでいた紬希は急におとなしくなって、シートの上にそっと座った。
「はしゃいでしまってとても恥ずかしいです」
「素直に喜んでくれた、と思っていた」
「機体の種類までご存じだし、すごいわ」
「それ、そっくりそのまま返そうかな。君にとっての布地の種類と同じことだよ」
「あ……」
紬希は貴堂に分かりやすく機体の種類を教えてもらって、本当にすごいと思ったのだ。
まさか、それが自分もなのだと言われるとは全く予想もしていなかった。
「他から見たら、君だってそうだ。僕はすごいって思ったよ」
誰かから自分を見たときに、紬希は嫌われている自分の姿しか今まで想像することが出来なかった。
貴堂のことをすごいと素直に思ったことを、自分に対して貴堂が感じてくれるなんてことは考えてもみなかった。
「君はすごい」
「そんなこと……」
そう言って紬希はうつむいてしまう。
貴堂はその頭を撫でた。
「本当のことだよ。謙虚なのはいいことだけれど、自己評価まで下げる必要はない」
力強い言葉や笑顔で他人に力を与えることができる。本当にすごいのは貴堂の方なのに……と紬希は胸がきゅうっとしてしまったのだった。
芝生のある緑の公園である。木陰は気持ちよく、さわやかな風が時折紬希の頬を撫でた。
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