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貴堂は気を付けてドアを閉めてくれて、自分も運転席に回る。
そうして、エンジンをかけ車を出すのかと思ったら、貴堂は少し考えるような顔をしているのだ。
「紬希さん……」
「はい」
この数時間で紬希は抵抗なく貴堂と話せるようになっていた。
「どなたかに告白をされたことはありますか?」
その質問に驚いて、慌てて紬希は首を横に振る。
「そんなの、ないです!」
「では、交際の経験は?」
告白もされたことないのに、そんなことあるわけがない!
紬希は首を思いきり左右に振る。自分の髪が強く頬に当たるのを感じた。その頬はなんだか熱い。
「そうか。てっきり……」
てっきり……?
「では、今どなたかと交際しているとか、そういうことはないんですね?」
「ないです……」
「僕のこと、嫌ですか?」
「っそ、それは絶対ないです!」
だって、こんな風に近くで見ると、その真っ直ぐで澄んだ瞳とか端正な顔立ちとか、素敵過ぎるのだし、眩しすぎて見れないくらいなのに……。
けれど、貴堂が好ましいのはそれだけではない。
今日一日で紬希を外に連れ出し、素敵な話をいっぱいしてくれて、そして認めてくれた人なのだ。
その見た目だけではない、思慮深く泰然としていて懐の深いところや他人をよく見ているところなどが本当に魅力のある人なのである。
「良かった……」
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