7.変わらないこと

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7.変わらないこと

「……なるほど」 ──なるほど?  紬希は首を傾げる。  貴堂もそのような返事が返ってくるとは思わず、ついこぼれてしまった言葉だ。  交際の経験がない、という紬希に丁寧に説明する必要があると貴堂は判断した。 「恋愛関係のパートナーになってほしいという、僕の希望です」  紬希のために貴堂は真面目に回答する。 「約束を交わし制約を背負うことで、人は覚悟を示し、信頼関係を強めることができるのだそうです。その信頼関係が安心感を強め、心の共鳴や理解を促進し、関係性が強固になるという効果を生みます」  助手席に座っている紬希はこくこくと頷きながら、真面目な顔で聞いている。  かつて貴堂はこんな告白をしたことはなかった。  絶対的に解釈が間違っていない自信はあるが、果たしてこれで良いのだろうか? (いや、もうちょっとこう……ロマンティックになにか……) 貴堂も自分でそう思わなくもない。 「そうなんですね!それが交際というものなのですね。確かに恋人同士でもご夫婦でもとても、信頼し合っている絆のようなものを感じます」  紬希は瞳をきらきらさせていて、貴堂は素直で本当に可愛いな、と思う。  けれどふうっと表情を曇らせた紬希は、俯いてしまうのだ。 「けど、私には難しくないでしょうか?」 「僕にはあなたが約束を違える人のようには思えませんが?」 「約束?」
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