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なんと好ましい返事だろうか。真剣に一生懸命なその表情も。
紬希にとって一大決心なのは想像がつく。それでもきちんと考える、と言ってくれたのだ。
貴堂はつい笑顔になってしまった。
「はい。待ってますね。でもその間にご連絡しますから」
「はい……」
頬を染めて、けれど困っているより嬉しそうに見えたのは、貴堂にとって救いだった。
きっと嫌われてはいないと思うが、それを紬希が自覚するのには時間がかかることも理解していたのだから。
なんだかふわふわとした気持ちで紬希は自宅に戻ったのだった。
帰りに貴堂が携帯のメールアプリに自分のIDを登録してくれて、これでどこにいても連絡できますねと魅力的な笑顔で笑って、また抱き上げられて車から降ろされて、とても綺麗な笑顔で、また仮縫いの時にお会いしましょうねと少しだけ名残惜しげに去ってしまっても、まだ自宅の前で呆然としていた。
(交際? 交際を申し込まれてしまいました!)
顔がなんだか熱い。
いつまでたっても家の中に入ってこない紬希を心配して、透が外に様子を見に出てきたくらいだ。
そこで呆然としていた紬希を見かけ、透は声を掛ける。
「おかえり。紬希? どうした? 貴堂さんは帰ったんだろう。なんで家にも入らずにそんなに顔が真っ赤なんだ?」
「……こ、交際してほしいって言われちゃいました……」
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