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「交際……? っていわゆる男女間での交際のことか?」
紬希は両手で頬を押さえてこくこく頷く。
「夢かもしれないわ」
きゅうっとほっぺたを引っ張る紬希に、慌てて透がそれを止める。
「何やってるんだ、止めなさい! 夢じゃないから!」
「本当! 夢じゃありませんでした。お兄ちゃん、どうしましょう⁉︎」
「どうしましょうって……」
答えはもう出てるんじゃないのか? と透は思う。それでも透は紬希に向かって微笑んだ。
「よく考えたらいいだろう。すぐに返事をしたのか?」
「いいえ。貴堂さんは考えるお時間をくれました」
そうだろうな。そんなことを紬希に即答を迫るような人だったら紬希を預けることなんてできない。
「では、よく考えて。とにかく中に入りな」
こくりと頷いて、紬希は家の中に入った。
作業場のドアを開け、ふう……と紬希は大きく息をつく。
いつもと同じ作業場なのに、なんだか違うように見えた。
そしてまだ、頬がほわほわと温かい。
こんなことが起こるなんて思わなかった。
確かに貴堂はとても素敵な人だと思う。
でもそんな素敵な人がすごく紬希を褒めてくれて、すごいとまで言ってくれて、そして交際してほしいと言われたのだ。
そこへ急に携帯の着信音が鳴り響いて、紬希はとびすさる。心臓が口から飛び出るかと思うくらい驚いた。
──び、び……びっくりした……。
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