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貴堂は花小路とはあまりそういう雑談はしたことはなかったけれど、先日の件を聞くのなら、今だろう。
真面目な花小路がタブレットで飛行中の確認作業をしているのを見ながら、つい、貴堂は口を開いてしまった。
「花小路くんの彼女、この前デッキに来ていたな」
「は!? か……のじょ? ですか?」
いつも冷たくて整った顔をしている花小路の、こんなすっとんきょうな声は聞いたことがない。こんな表情も貴堂は見たことがなかった。
いつもクールで整ったその顔が、目を見開いて驚いて貴堂を見ているのだ。むしろ貴堂の方が驚いた。
「僕……いません、けど」
なんだ、この反応。
花小路は顔を真っ赤にして、口元を手で覆ってしまっている。
可愛いが……、こんなにピュアで大丈夫なのか!?と貴堂が心配になるくらいだ。
「けど、この前デッキにいただろう?」
彼女ではなくて、片思いの相手だったのだろうか?
それならば、この反応も納得がいくが。
「デッキ……あ、それは幼なじみです」
「彼女じゃないのか?」
花小路の表情がふっと和らぐ。
「はい。僕の実家が彼女の家の隣にあって、子供の頃から、兄妹のように育ったので。ああ、見られていたんですね」
瞳を伏せて微笑んだ花小路は、こんなに表情豊かだったのかと貴堂が驚かされるほどの華やかさがある。
きっとこんな表情を近くで見たら、女性はたまらないんだろうな、と思わせるほどの綺麗さだ。
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