10077人が本棚に入れています
本棚に追加
「予想できないことが起こるのが現実というものだよ」
三条は真顔を作っていたが目が笑っている。
「で、どうしたんですか?」
「どこかに飛び去って行った。俺も補助についていた機長も爆笑」
さすがの貴堂も噴き出す。
降りることを許されず、かと言ってどのように対応したら良いか分からず、しかし機を落としてはいけないというその信念は買うが、飛び去るしかなかったのを想像すると申し訳ないが笑える。
「ひどい人ですね」
「まあ、そういう事を繰り返して一人前になっていくわけだよ」
三条は澄ましてそんな風に言った。
とっさにそういうことが思いつく頭の柔らかさと実施してしまう実行力がこの人のすごいところなんだよなあ……と貴堂は今回教官が三条に当たったパイロットは、逆にラッキーだっただろうと思うくらいだ。
大変な勉強にはなっただろう。
三条は貴堂に改まった口調で話しかけてくる。
「メール見たか?」
今日チェックしたメールの中で三条と関わりがあるのは社内報の件だけだ。
お互い若い機長同士の対談を社内報に掲載するので時間が欲しいというメールが広報から来ていた。
「はい。社内報の件でしたら確認しました」
最年少機長というのは様々なところで脚光を浴びるもので、貴堂も受けられないもの以外は取材も受けてきた。それも仕事だと言われるからだ。
最初のコメントを投稿しよう!