7.変わらないこと

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 でも仕事でなかったら受けたくない、が貴堂の正直なところではある。  特に専門誌の取材は他社のパイロット仲間も目にするし、ラウンジでも注目を浴びたりして微妙に居心地が悪くなったりする。  とは言え、自分も今までは『あれが最年少機長の三条さんか……』という目で見ていたのだから、やむないことではあるのだろう。 「よろしくな……っても貴堂くんは相変わらず乗り気じゃないんだろう」 「社内報だから受けたというところもありますよ」 「夢を与えるのも仕事のうちだぞー。みんなが貴堂くんを目標にするんだ。気持ちいいだろうが」 「そんな風に思えるのは三条さんくらいですから」  貴堂は思わず微妙な表情になってしまった。  三条こそはその華やかな風貌を活かして、かなりの人脈を築いていると聞く。  三条が機長の機にも貴堂はコーパイとして乗務したことがあった。陸でこそこんな風だが、機長としての三条は一旦仕事となると、ストイックで細かく頼りがいのある人でもあるのだ。  三条はふと、目を細めて笑った。 「俺は最年少記録を更新するのなら貴堂くんだとコーパイの時から思ってた。一緒に乗務したことがあっただろう? あの時、見えないはずの風が貴堂くんには見えてるんじゃないかと思ったよ。俺はデータからの分析が得意で最年少だったけれど、貴堂くんはまさに天から与えられた才能なんだと思ったな」
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