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貴堂こそ三条の細やかで綿密な分析には驚かされ勉強になったので、そんな風に思ってもらえるとは予想もしていない嬉しさがあった。
「今後はなかなか乗務で一緒になることはないだろうから、この機会にゆっくり話したい。俺は楽しみにしているから」
「よろしくお願いします」
メールで依頼を受けてから実は気が重かった貴堂なのだが、こんな風に言われたら三条とならば一緒に取材を受けたいと思った。
最年少機長などと言われても、尊敬できる先輩の背中ばかりを追いかけているような気がした。
このスタンバイの翌日は貴堂は国内線乗務だった。
羽丘から千歳に向かい、そのまま同じ機で羽丘に引き返すという乗務である。
さらに翌日も羽丘から福岡に飛んで、そのまま羽丘へと往復する乗務だった。
翌日はオフだったけれど、次の日の国際線乗務の準備があり外出することは難しい。
本当なら紬希の顔を見たいとも思っていたのだが、やはりペースを変えることは困難だと貴堂は感じる。
むしろこんな風で交際なんて出来るのだろうか、といつも思うのだ。
勤務を熟知しているはずの客室乗務員とも交際が続いた試しはないのに。
愛おしい気持ちはある。
大事にも思う。
けれども、譲れないものもある。
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