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貴堂は最初の日に自分はメールを送りたくて送るけれど、紬希は無理しなくていいとか、勤務中は返信できないから返信がなくても気にしないでほしいと言ってくれていてそれにも紬希は安心した。
返さなくてはいけないと思うと、紬希にはそれもプレッシャーになってしまうからだ。
そうでなくても到着した、とメールをくれるだけでどれだけ安心することか。
その優しさが紬希には嬉しかった。
紬希がそっと携帯を置いた時、着信音がして慌てて紬希は携帯を手にする。
(貴堂さん?)
先程おやすみなさいとメールしたばかりだ。
「はい……?」
『ごめん……。我慢できなくて電話してしまった』
──我慢……?
『君の、声が聞きたくて……』
紬希の胸がきゅうっとする。
そんな風には思ったことはなかったけれど、そう言われれば、紬希も声が聞けて嬉しいという気持ちが湧き上がってくる。
「あ、私も聞きたかったみたいです。貴堂さんのお声」
ふふっと電話口で貴堂の笑い声が聞こえた。
この前、紬希も目にしたあの優しい笑顔なのだろう。
『そう言ってもらえて、よかった』
「福岡は晴れでよかったです」
『ん?』
「あの、お天気予報を見て……晴れってなっていたので」
『僕のフライトを気にしてくれていたの?』
「はい。きっとお天気の方がいいんだろうなって」
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