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『いない時に、僕のことを考えてくれていたんだ……』
確かにそうなる。
直接ではないけれど、あなたのことを考えていたと言ったも同然なのだと紬希も気づいた。
「あ……そう、ですね」
『嬉しいよ。明日の国際線はロンドンなんだ。一応晴れの予報だね。ロンドンのヒースロー国際空港は世界でも指折りの大きな飛行場なんだ。今回は現地で2日ステイがあるから……帰ってきたら、会いに行く』
「その頃には仮縫いが仕上がっています」
『うん。それもだけれど、紬希に会いたいんだ』
こんな風に真っ直ぐに気持ちをぶつけられることに紬希は慣れていないけれど、貴堂のそれは不快なものではなかった。
会いたいと真っ直ぐ言われることがこんなに胸をぎゅっとつかまれるような気持ちになるものだと紬希は思わなかった。
紬希は困ったときは自分の心に問いかけることにしている。
会いたいと言ってくれた貴堂に対するその答えは、嬉しい、自分も同じ気持ちだということだった。
「貴堂さん、私も会いたいです」
はっきりと言うことは恥ずかしくてとても小さな声になってしまう。
電話口の向こうが一瞬しん、としたので紬希はなんだかどきどきしてきてしまった。
(なにかおかしなことを言ってしまった?)
『今すぐ会いたい……』
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