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「ああ。君がすごく大事にしているな、と。声をかけようかとも思ったが、親密な雰囲気だったから」
儚くて透明感のある彼女と、王子様とも称されるほどの花小路とのツーショットは、今思い返してもまるで絵のようだった。
花小路が風の中、彼女を守っていた姿は今も貴堂の頭から離れない。
「そうですね。可愛いですよ。彼女はとても大事な子です」
「そう……。彼女のこと、好きなのか?」
大事ですと話す花小路の風情は、本当に大事そうで、つい貴堂はそんな風に聞いてしまった。
「……っ……、貴堂キャプテンって、ストレートですね」
花小路は急に照れたような顔を見せる。
「あ、困るならやめとく。無理に答えなくていいし」
無理な聞き出しは、パワハラやセクハラにも該当するし、そこまでのことではない。
「いえ。ん……そういうのとは、違う気がします。大事なんですけど、幸せになってほしい、と思いますね」
貴堂は花小路の言葉に引っ掛かりを感じた。
幸せにする、ではないのか。
花小路は貴堂を見て、口を開いた。
「彼女は……」
「ん?」
「このシャツを届けに来たんです」
柔らかい表情の花小路は自分のシャツを指差す。
それは制服のシャツだが。
「制服?」
「はい。シャツを作っているんです」
「手作りのシャツか!」
「はい。一度着たらすごく良くて、もうほかのシャツは着られないんです」
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