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先日貴堂が選んだ布については現在まだ縫うところまでには至っていない。
紬希は使用する布については、まず一定温度の熱水に12時間浸ける。これは今後何度もなされる洗濯に影響を受けない、強い生地を作るためだ。
そして一度乾燥させた後アイロンをかけ、採寸を元にカッティングしてゆく。
仮縫いはシャツの場合、実際に使用する布では行わない。仮縫い用の布で作成するのだ。
今は、紬希はその作業をしていた。
紬希の作業場はログハウスをイメージして作られている。
無機質に何もない方が作業がしやすいかも知れないと紬希は最初、白い床、白い壁で作業場のオーダーをしようとしていた。
けれど、兄の透から『一日中、ここに籠って作業することになるのにそんなオーダーでいいのか?』と今のデザインを見せられたのだ。
それは透の知り合いがデザインしてくれたもので、木のぬくもりがたくさん感じられるような作業場だった。
大きな窓と木のドアや床。壁にも木材が使われていて、ここが住宅地の中と忘れそうになるくらいの室内だった。
一目見て気に入ってしまい、紬希はそのデザインにしてもらったのだ。
今はそんなお気に入りの作業場で一日中こもって作業することがとても楽しい。
顧客と呼べるような、リピーターのお客様も増えてきたし、お客様の期待に応えられることが嬉しい。
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