8.ここにいなくてもあなたを思う

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 貴堂は紬希にはロンドンのヒースロー空港は大きな空港だという話をした。実際それも間違いではないけれど、ヒースロー空港は、実は着陸時には非常に気を遣う空港でもある。  空港から数百メートルのところに住宅があり、騒音の減少をはかるため降下角度が他の空港よりも急なのだ。  ギリギリまで高い高度を保つことで騒音の減少を図るのである。高度があることによって騒音が減少する効果が得られるからだ。  けれど、その分降下角度を上げて着陸態勢に入ることになる。  急と言っても0.5度程度のことだけれども、それでもパイロットへの負担は大きい。  着陸時、15000フィートまでの降下の許可が下り、管制とのやりとりはコントロールから、アプローチ、アプローチからタワーへと目まぐるしく通信先が変わる。  その間も機体を安定させ進入角度を確認し、着陸許可が下りるのを待つ。 『JS air120 ,Cleared to land, runway 27L』 「Cleared to land, runway 27L, JS air120 」  タワーからの滑走路の指示が出る。副操縦士がコールを繰り返し、全てが問題ないことを貴堂も確認した。  着陸許可が下りたので、貴堂は自動操縦を解除し手動に切り替える。
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