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いつもの紬希なら怖くて突き放してしまうだろうけれど、その時の紬希にはそうやってされることはとても自然なことに思えたのだ。そうして紬希は貴堂の胸にそっと顔を埋めた。
「私もです……」
とくとくと耳に響く鼓動が自分のものなのか、貴堂のものなのか、紬希には判別はつかない。
分かるのは、この腕の中がとても安心できる場所なのだということだけだ。
広い胸と力強い腕、すっぽり紬希を包んでしまう身体と爽やかな香水の香り、そして密やかな息遣い。
こんな中でも包み込むようで、強く抱擁している訳ではないのは、紬希を思ってのことだろう。
しばらく二人はそうして、抱き合ったままお互いのぬくもりを感じてじっとしていた。
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