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10.交際の返事
紬希の作業場の中には奥にミーティングスペースがある。
ほとんど使わないけれど、たまに業者などが来た際に打合せで使うための部屋だ。
紬希はその部屋の窓を開けた。
「ごめんなさい。あまり使わないので埃っぽいかもしれません。掃除はしているんですけれど」
そう言って、貴堂を案内する。
紬希がお茶を入れていると言ったら、貴堂が持って来たお土産を2人で開けようということになったのだ。
「ああ、分かります。使わない部屋独特の淀みのようなものがあったりしますね。僕もマンションの部屋で物置になっている部屋がそんな感じだな。掃除していてもなにか埃っぽい気がしますよね」
その小部屋に足を踏み入れた貴堂はほう……と声を漏らした。
暖色の間接照明は木の内装を温かく照らしている。部屋の奥には、コレクションのカタログやパンフレットなどが綺麗に置かれていて、一枚板の木のテーブルと奥には座り心地のよさそうなベンチソファがあった。
「僕の家の物置とは比べたら失礼なくらいでした」
「まあ……」
くすくすと紬希は笑う。
奥へどうぞと言われベンチソファに貴堂が座るとテーブルに花茶の入ったポットが置かれた。そして丁寧な手つきで紬希がお茶をいれてくれる。
お茶と花の混じったような落ち着いた香りが部屋に溢れた。
「花茶か……」
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