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「ええ。雪ちゃん……えと雪真さんが上海に行ったときに買ってきて下さったんです」
「そうか……花小路くん、よく来るの?」
「どうでしょう? 海外に行かれて何回かに1度って感じでしょうか」
JSAの国際線勤務はたいてい月に2回から3回だから、1~2か月に一度は来ている、ということなのだろう。
「そう言えばこのお茶を用意した時にお兄ちゃんが選んだと言いなさいと言ったわ。どういうことなのかしら?」
貴堂はお茶を吹きそうになった。
──紬希には悪気はない。けれど彼女を大事に思っている人がいることを肝に銘じておけと言われているような気がした。
貴堂は軽くため息をついて、口を開く。
「大事にしますとお兄さんに伝えてくれる?」
「大事に?」
「それで伝わると思うから」
「はい」
不思議そうな顔をしている紬希の頭を貴堂はポンポン、と撫でた。
「紬希は気にしなくていい」
そう言って貴堂は紬希が用意してくれたお土産のお菓子の包装を外した。
「はい、あーん」
と紬希に差し出す。
紬希はつい素直にお口を開けそうになり、はっ!とした。
「もう! 貴堂さんっ! 子供じゃないです」
「子供じゃないよ。恋人に食べさせるのはとても楽しい。二人きりだから出来ることなのだしね」
「じゃあもし私が貴堂さんにあーんってしたらどうします?」
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