10.交際の返事

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「喜んで頂く。紬希くれるの?」  仕返しのつもりで言ったのに余裕の表情で返されてしまう紬希だ。  しかも貴堂はくすくすといたずらっぽく笑っている。 「なんだか貴堂さん、楽しそうです」  紬希は首を傾げて聞いた。  そういえば、先程から貴堂はとても楽しそうだ。 「楽しくて、幸せだよ。そしてくすぐったくもある。本当に、はしゃぎすぎだな」  紬希は手元のお菓子を貴堂に差し出した。 「あーんです」  とても真っ赤な顔だ。  貴堂はその手を掴んだ。そして両手で包む。  大きくて温かいその手に包まれただけで、紬希の鼓動が大きく跳ねた。 「紬希、それは恋人に。交際の返事は了解なのだと取ってもいいのかな?」  間接照明の淡い光の中で微笑む貴堂はこの上もなく綺麗だった。 ──そうだった。  仮縫いの時に返事をすると言って、まだ返事をしていなかった。  貴堂があまりにも甘やかしてくれるから。 「あ……の、ふつつかですが……よろしく、お願いいたします」  ふふっと貴堂は笑う。 「お嫁に来てくれそうな勢いだな」 「そういうことではなくて、ですね」 「うん。分かっている。大事にするよ」  紬希が持ったままにしていたそのお菓子を、貴堂は口元に引き寄せてぱくっと食べた。 「美味しいな」  そして半欠けのそれを自分で手に取り、 「紬希にもあげるよ」 と紬希の口元に寄せる。
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