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1.恋心
***
「舞花、今日の訪問者予定リスト見せて?」
「うん、これ」
隣に座る同僚の美里に声をかけられ、手にしていたタブレットをそっと渡した。
私の名は夏野 舞花。年齢は二十五歳で、大手商社の受付で働いている。
ビルの一階ロビー中央に“ Information ”と書かれた場所で、きちんと制服を着た女性がふたりほど座っている光景がよくあるけれど、要するに私の仕事はそれだ。
運よく大手企業に就職できたのは良かったけれど、受付はその会社の“顔”なので、上から細かい注意も受ける。
どんなお客様が来られても、きちんと対応しなくてはいけない。
「常務は午前中にアポが二件入ってて、午後からは外出なのね」
事前にアポイントが入っている場合は受付にも連絡が来るので、それをリスト化して業務前に把握しているのだ。
重役クラスの方たちは、秘書課から社内メールでその日の大まかな予定も送られてくる。
美里は私が渡したタブレットを左手に持ち、ノートパソコンでリストと違っているところがないかチェックをしていた。
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