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「じゃあ和久井さん、今度私たちと飲み会をしません?」
美里がニコニコと笑いながら私と和久井さんを交互に見て言った。
私はその発言に驚きすぎて、目を見開いたまましばし固まってしまう。
「こちらもあと二、三人誘うので、和久井さんも同僚の男性何人かに声をかけてもらうと助かるんですけど……どうですか?」
「いいね。うちの同僚、受付嬢と飲み会なんて聞いたら話に飛びついてくるよ」
和久井さんは同僚の誰かを思い出して笑っていたが、逃がさないとばかりに美里はどんどん話を詰めて、ついに具体的な日程までこの場で決めてしまった。
「美里、なんで飲み会なんて言いだしたの」
「ん? 舞花の援護射撃に決まってるじゃない」
和久井さんが帰ったあとに、隣にいる美里に口を尖らせて訴えてみたが、彼女は全部私のためだとあきれ顔になった。
「だってさ、もっと和久井さんと接点作らなきゃ。今のままだとこの先なんにも進展しないよ?」
たしかにそのとおりだ。和久井さんが来社してくれているあいだはいいけれど、担当替えなどで急に来なくなる可能性も否めない。
そうなれば、もう二度と会えなくなってしまう。
和久井さんと個人的に連絡先の交換をしていない今、私たちには本当に小さな接点しかないのだ。
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