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2.女心
***
「竣、お前なにやってんの?」
自分のデスクのパソコンで書類を作っているところへ、同期の佐藤が声をかけてきた。
「明日の会議資料作ってる」
「お前なぁ、今日は例の飲み会の日だろ。そんなの早く片付けちゃえよ!」
俺の耳元で小声でささやく佐藤は、既に飲み会モードのようだ。男の俺から見ても顔がニヤついていて気持ち悪い。
定時まであと三十分だ。
絶対に今日は一秒たりとも残業はなしだと、佐藤は朝から仕事をテキパキ精力的にこなしていた。
だからといって三十分も前からそわそわし出さなくても。気合いが入りすぎだろう。
俺の仕事のはかどり具合まで気にするなんて、大きなお世話だ。
「佐藤、お前は明日の会議の準備は大丈夫なのか? ちゃんとやってなかったら課長に怒られる前に宇田さんに絞られるぞ?」
うちの営業二課には、営業部で常に成績トップの宇田さんという先輩社員がいる。
後輩への指導も熱いし、その先輩が事実上うちの課の課長みたいなものだ。
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