368人が本棚に入れています
本棚に追加
「もしかして専務って……」
「ん? あぁ……まだかな」
美里も私の言わんとすることがわかったようで、瞬間的に眉をひそめた。
「とりあえず秘書課に聞いてみる」
私はあわてて秘書課のほうへ内線電話で確認を入れた。
おそらく専務はまだ会社に戻ってきていない。
帰社予定は十三時ということになっていて、和久井さんとのアポは十三時三十分だ。
予定通りならば専務は会社にいるはずなのだが、会社の地下駐車場に取り付けてあるカメラの映像をパソコンで確認しても、専務の社用車の駐車スペースに車はない。
案の定、秘書課に電話してもまだ戻ってきていないという返事だった。
「和久井さん、すみません。専務がまだこちらに戻ってきていないようですので、担当秘書の携帯に直接電話をしてみます」
そう伝えると、和久井さんは「お願いします」と苦笑いの笑みをたたえた。
渋滞などで帰る予定が少し遅れているだけならいいのだけれど……
そう願いながら同行している専務専属の秘書に電話を入れたが、専務は優雅にまだ会食中らしく、会社に戻るにはあと四十分くらいかかると言われてしまった。
最初のコメントを投稿しよう!