5.前進

19/35
前へ
/157ページ
次へ
「でも、肉食ではないのかも。だって私たち、なにもなかったもの」 「……は?」 「私が酔ってたから部屋で休ませてくれたの。お水を飲んで、しばらくしたら私の家まで送ってくれて……それで終わり」  結局あのあとは、和久井さんがタクシーで家まで送ってくれた。  本当にただそれだけだった。 「え? 部屋に行ったのに?! 飲み会帰りでお酒だって入ってるし、そういう雰囲気になるものだと……。お持ち帰りされたって言うから、てっきり泊まったのかと思ったわ」 「泊まっていってもいいけど? とは言われたけど」 「なにそれ、和久井さんに誘われてるじゃん。舞花、なんで泊まらなかったのよー!!」  美里が興奮して、ガクガクと音が出そうなほど私の肩を両手で前後に揺さぶる。 「だって冗談に決まってるし、お酒の勢いで一夜限りとか、そういうのは嫌だったの」  美里は私の肩から両手を力なく下ろし、納得したのか苦笑いの笑みを浮かべた。
/157ページ

最初のコメントを投稿しよう!

373人が本棚に入れています
本棚に追加