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『 』が一人ぼっち。
たぶん、僕はもうすぐ消えてしまう。
それもいい。
君が苦しまないなら、僕はそれが一番いい。
ただ消えてなくなるのを待ち続ける日々も、君のためだと思えば意味だって生まれる。
怖くなんてない。
その日もいつも通り、僕は息を殺していた。
すると、空間に亀裂のような何かが走っているのを見つけたんだ。
何だろう、と僕はそうっと近づいた。すると、亀裂の隙間から、色とりどりの空間が広がっているのが見えた。
もしかして。僕は一瞬で察した。
これは、世界だ。色やモノや人すらも、大雨が降った翌日の川のように、絶えず流れている。
この先に、君のいる世界が。
僕は無意識のうちに生唾を飲んでいた。
諦めたふりをしながらも、本当は最後に君に会いたいと心の底で願っていたんだ。
だけど、僕には世界を跨ぐ力もない。
仮に何らかの方法で世界に飛び出せたとしても、再び僕が顔を出せば君を困らせてしまうだけだろう。
でも、亀裂の先に広がる世界。
長い間ひとりぼっちで過ごしていた反動もあり、久々に見る世界はより一層輝いて見えた。
ーーーー少しだけなら。僕は自分に課した禁忌を解いた。
そろりと亀裂の隙間から、誰にも気付かれないように外に、否、世界の内側に紛れ込んでいった。
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