夕立と駅

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夕立と駅

 ざあぁぁ、ざああぁぁ、  あぁ、いらつく。  とてもじゃないが、地味にイラついてしょうがない。  降り盛る雨の音が僕の思考を強く乱す。  手に持つ携帯端末の画面を眺めながら、その通信状況を静かに眺める。  綺麗な三本線。  一つの丸から放たれる三本の扇的な線を見ると、更に俺の前で苛立たしさを強くさせる。 「何でこれ程、繋がりが悪いんだ?」  どこか苛立ちを抱きながらも、僕はジッと動かない端末の画面を疑問に思いながら眺める。  ずっと、ぐるぐると回る輪っかと眺めながらなにもうつらない空白の画面をずっと眺める。  その光景がとてつもなく、無慈悲で無残で虚しい光景だった。  これ程、自分自身がスマホと言う存在に頼らなければ時間を潰せないのかと思ってしまう程、自身に対しての呆れ、怒りが込み上げてくる。  それの心持を象徴するように、電車がゆっくりと揺れその窓辺からは強い雨が降りかかる。  ざぁざぁ、と強い雨と風を勢いよく電車に突き付けられるが、ゆっくりと移動する電車にはそのような事は関係なかった。  だが強く吹かれ揺れる度に、僕の胸の奥は乱された。 「はぁ、スマホが一つ使えないだけでいらいらする。いやになる」  目の前の状況が打開できないだけで、一瞬で不快を満たし、何かにぶつかりたい気持ちになる。  あぁ、嫌だ嫌だとそんなことを抱きながら、駄々を捏ねる子供の様に僕の気持ちはゴロゴロと転がり周り、必死にもう一人の僕が駄々をこねる僕に対して叱りつけている。   「はぁ」  重たい溜息を吐いた僕はそのまま大きなにもっと友井に、自身の背中を電車の座席の背もたれにもたれかかると体の中の不快感の空気は漏れ続ける。  何してんだろ。  ほんの少しだけ深く考えたらすぐに使えるだろうはずなのに、この不快感は胸の奥の中にずっと溜まっていく。  まるで、冷たい空気や水銀と同じようにずっと体内の中で沈んでいた。  この沈んでいた感覚を拭えない。拭えないから不快感が残り、沸き上がる。負の無限ループ。  憎たらしさと悲しさがずっと繰り返され、虚しさと葛藤、嘲笑う感覚が残り続ける。  そうしたらいいんだ? どうしたらいいんだ?  ずっと頭を傾げる。傾げ続ける。  梟の様にずーっと、じーっと、眺め考え諦める。 「………なに、やってんだろ」  不快感を抱いたまま僕は、静かに顔を揚げるとそこには、綺麗に晴れた夕空と暗い星々が流れている空が移っていた。  目の間に広がる綺麗な風景に僕は、ふとその光景に目を奪われながら、じっと外の風景を眺めていた。  不思議な風景。  そう胸の奥では、そんな言葉が漏れており、瞳は既にその光景に奪われ、手に持っていたスマホはゆっくりと手から離された。 「………本当に不思議だよ」  苛立ちも何もかも、自身にとっては不思議な物。  何に不機嫌になっているのかさえも自身は分かってなどはいない。  そんな事を思いながら夕立が去り、雨雲の隙間から夕日の日差しが差し込む。  日差しはそのまま僕に道を示すように、目の前に広がる海辺の駅は美しく紅い海を背景に輝いていた。  そして、スマホを手に持ち電車を降りた。
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