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その3 誰か来たようだ」
「メーラ! どういうことなの!」
翌朝。
しっかりぐっすり寝過ごした私が遅めの朝食を取っていると、扉を開ける騒々しい音と、金切り声が食堂に響き渡った。
お陰で完全に目が覚めた。
「……メローネ様、朝からお行儀が悪いですよ」
食堂の侵入者――ペスカの母親であるメローネにそう投げかけると、元々怒りの形相に満ちていた彼女は、さらに苛立ちを露わにする。
ずかずかと食卓へと近付いてきた彼女は、その怒りを隠そうともせず私にぶつけてくる。
とはいえ、無駄に縦に長いこのテーブルのお陰で、いくらかの距離は保たれている。
「わたくしとペスカをこの家から追い出すなんて、どういう了見なのっっ!」
「……元々この家は私のものです。お父様があなた方を引き取ったのは、ペスカが成長するまでという条件つきでしょう。もうその約束は履行されました。ねえ、爺や」
私の言葉に、部屋の端に控えていた爺やは大きく頷く。
そして、「恐れながら」と恭しく話し出した。
「先日、ペスカ様とケルビーニ伯爵子息の婚約が成立しました。それに伴い、メローネ様とペスカ様はこの家の扶養から外れる事となります」
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