その3 誰か来たようだ」

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 伯母様が何を思って暮らしていたのかは定かではないが、このベラルディ伯爵家の正統な後継は私しかいない。  既に16歳で成人済みのため、爺やに手伝ってもらいながら、先月ようやく爵位を継承する手続きを終えたばかりだった。  当初の取り決めの際は伯母様とお父様で話をしていた筈だけれど……。  私が立ち上がると、リーベスや爺や、それから他の使用人たちも倣うようにメローネ伯母さまを見つめた。  その様子にたじろいだのか、伯母さまは半歩後ろに下がる。 「ペスカはもうウーヴァ様の元へ嫁ぐ事が決まったのです。彼は次男だから家督を継ぐことはないでしょうから市井に出るのかもしれませんね。でもきっと準備金は伯爵家から出るでしょうし、慎ましく暮せば問題ないかと」 「は……? な、どうして伯爵のウーヴァ様が市井に出るのよ!」  私の言葉に、メローネ伯母様はまた眉を吊り上げる。  伯父様と結婚した伯母様ならばその仕組みは知っているものと思っていたが、どうやらそうでもないらしい。
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