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その4 おや、義妹の様子が……
入ってきた少女はいつものふりふりピンクなものと違ってやけにシンプルなワンピースを着ている。
だがこのふわふわの淡い茶髪を揺らすのは、紛れもなくペスカだ。
「ああペスカ! 昨日は倒れたと聞いたけれど、もう大丈夫なの? きっとこのメーラに酷いことを言われたのね。貴女のお姉様は横暴だわ。婚約者を奪われたからといって、こんな非道な手段に出るなんて」
伯母さまは俯いているペスカに近づく。
婚約者を奪うとか言っている時点で、そっちの方が非道な気もするが、そんな常識的な話をしたところで意に介さないだろう。
「お嬢様、ここは俺たちが」
思案しているところに、後ろで控えていたリーベスから声がかかる。
顔を上げると、リーベスの向こう側では爺やや他の使用人たちは一様にいい笑顔を浮かべている。
「ほら、貴女もこの極悪非道の義姉に何か言っておやり! ……ペスカ?」
ペスカは、自分の名を呼ぶメローネ伯母さまの手を払うと、ゆっくりと私に近づいて来た。
半歩前に出たリーベスの背中越しに見える彼女は、やっぱりいつもとは違う。
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