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静まり返った室内で、私が唐突にそう言ったため、全員がぽかんと呆気に取られた顔をした。
詳細を知っているはずの爺ややリーベスまでも同じ顔をしているものだから、少しおかしくなってしまう。
とは言え、端的過ぎたかと思い直した私は、順を追って話すことにした。
「――私は、現ベラルディ伯爵家の当主であり、この家を継いだ者として、領地の繁栄を守る義務があるわ。とは言え、私に出来ることは、魔道具を開発することばかり。だから、皆の力を借りて、もっとこの家を盛り立てて行きたいと思っているの」
私は自分が貴族としての社交や政治的な部分に疎い事は分かっている。これまでずっと領地に引きこもって開発ばかりしていたのだ。王都がどうなっているのかなんて、まるで分からない。
でも、このままではいけないと、思った。
「……それは立派な志だと思うよ、メーラ。だけど、もう僕は平民の身だし、君の力になれるような事は何も出来ないと思う」
少し自嘲気味に、ウーヴァは静かにそう語る。確かに、伯爵家を飛び出したらしい彼は、もう社交界に戻ることを厭うだろう。
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