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最終話 おおきな家族
私はふと手を止めて、書類に刻まれた日付けを見た。――あの婚約破棄騒動から、早くも2年が経つ。
父の後を継いだばかりで名ばかり当主だったあの頃より、少しは当主らしくなれただろうか。そんなことを思いながら、領民から寄せられた陳情書や、必要な書類に目を通す。
こんこん、と執務室の扉をノックされる音が聞こえて、「どうぞ」と声をかけた。
部屋に入ってきたリーベスは、以前のような従者服ではなく、正装を身に纏っている。
「リーベス、お帰りなさい。早かったのね。お出迎えが出来なくてごめんなさい」
「いえ、俺が早く帰って来たかっただけですので。馬車はまだ、あと1週間は到着しないでしょう」
「まあ、もしかして……」
「はい。馬車の到着が待ちきれなかったので俺だけ先に戻ってきました」
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