最終話 おおきな家族

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 ふわふわと黒髪を撫でている内に、だんだんともふもふが増してゆく。  今夜は満月。  彼が急いで帰って来たのも、きっとこのせいだ。まだしっかりとはコントロールが出来ていないため、満月の夜だけは、狼に戻るのだ。  熱に浮かされたようにしていたのは、変化の前触れだったのだろう。 「おやすみなさい。旦那さま」 「わふ……」  その毛並みを撫でているうちに、リーベスの呼吸は規則正しくなってゆく。寝食も忘れて、昼夜問わずに走り続けてきたのだろう。早く、吉報を伝えるために。  リーベスの体から力が完全に抜ける前に、私はそこから抜け出す。しっかりと瞳を閉じて、リーベスは眠ってしまっている。 「おやすみ、リーベス。よい夢を」  もふもふとした頭を撫でて、ベッドから離れる。私もこの吉報を伝えなければ。他でもない、大切な義妹に。 「モモコ。ウーヴァはやり遂げたわ。貴女もそろそろ、結論を出さなくてはね」  モモコの部屋で彼女にそう伝えると、それこそ桃のように淡く頬を色づかせる。
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