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急いだせいで、食い気味になってしまった。
「えっ、でも、彼はずっとお義姉さまの婚約者で……」
「昨日の手続きで正式に婚約は解消されたし、今は貴女が彼の正式な婚約者よ。もう取り消せないわ。同じ人ともう一度婚約するなんて、あり得ないもの」
「そんな……!」
そう告げると、先程まで威勢の良かったペスカは、分かりやすく青褪める。
「終わった……第二の人生がお世話になってる人の婚約者寝取りスタートとか詰んでる……いやなんなのこの感じ……転生ってもっとこうキャッキャウフフなチート展開じゃないの……?」
がっくりと項垂れた彼女は、呪文のような言葉を床に向かってぶつぶつと呟いている。
「ねぇリーベス、ねとり、って何?」
「……お忘れください。お嬢様は知らなくてもいい言葉ですので」
「爺や?」
「おや、私は最近耳が遠くて」
どうやら誰も教えてくれない気らしい。
現に、私と目が合った使用人たちは分かりやすく目を逸らして、口笛を吹いたりしている者もいる。下手だけど。
それにしても、と思う。
ペスカの様子がおかし過ぎる。
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