その5 おかしい

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 急いだせいで、食い気味になってしまった。 「えっ、でも、彼はずっとお義姉さまの婚約者で……」 「昨日の手続きで正式に婚約は解消されたし、今は貴女が彼の正式な婚約者よ。もう取り消せないわ。同じ人ともう一度婚約するなんて、あり得ないもの」 「そんな……!」  そう告げると、先程まで威勢の良かったペスカは、分かりやすく青褪める。 「終わった……第二の人生がお世話になってる人の婚約者寝取りスタートとか詰んでる……いやなんなのこの感じ……転生ってもっとこうキャッキャウフフなチート展開じゃないの……?」  がっくりと項垂れた彼女は、呪文のような言葉を床に向かってぶつぶつと呟いている。   「ねぇリーベス、ねとり、って何?」 「……お忘れください。お嬢様は知らなくてもいい言葉ですので」 「爺や?」 「おや、私は最近耳が遠くて」  どうやら誰も教えてくれない気らしい。  現に、私と目が合った使用人たちは分かりやすく目を逸らして、口笛を吹いたりしている者もいる。下手だけど。  それにしても、と思う。  ペスカの様子がおかし過ぎる。
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