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この子とこんな風に会話を交わした事があっただろうか。まあ、今もまともとは言えないけれど、きちんと受け答えをしている事が珍しい。
この家に招いた時には既に私に対して敵意を剥き出しにしていたのに、目の前にいる少女は、いたって素直だ。
ちらりとメローネ伯母様に視線を送ると、彼女は彼女で娘の豹変ぶりに驚きを隠せないようで、目を白黒としていた。というか、ほぼ白目。
「――ペスカ」
私が彼女の名を呼ぶと、泣き出しそうな瞳が私を見上げる。その姿は、小動物のように可愛らしい。
「どうしたの? 貴女、昨日までと随分様子が違うけれど。何かあったの?」
制止するリーベスに目で合図を送り、私は一歩前に出る。
このペスカからは危険性が感じられないのだ。それはリーベスも同じだったらしく、黙って私を見守ってくれている。
私の問いかけに桃色の瞳がふるりと揺れたかと思うと、急に立ち上がった彼女は、私に突進して抱きついてきた。
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