その1 婚約解消は突然に

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 私の婚約者であり、ゆくゆくはうちの伯爵家に婿に来て共に生涯を歩むはずだった。 (まあ、悪い人ではないんだけどね……)  祖父世代の取り決めによって、幼い頃から婚約者同士だった私たちだ。これまでもそれなりに親交はある。  だがそんな彼は、私の義妹のペスカに心底惚れこんだらしい。  そして婚約を解消する為に、自ら私に説明に来たという事なのだろう。多分。  詳しく説明してもらえないので、もうこっちで勝手に推測するしかない。 「お姉さま、ごめんなさい。わたし、気持ちを抑えられなくて……!」  ふるふると震えながら、桃色の大きな瞳を揺らすペスカに、頭が働かない私は対応しきれない。  確かに彼女の柔らかなミルクティー色の髪とまんまるな瞳はとても愛らしく、日々屋敷に篭っている私の地味な姿とは対照的だ。  そういえば前髪を切るのをずっと忘れていたせいで、視界が暗い。いや、これは眠いからなのか。  もう瞼が閉じそうだ。半目になっている自信がある。  きっと大層目つきが悪いだろう。 「……ウーヴァ、あなたの両親が了解しているのならば問題はないはずよ」
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