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私の婚約者であり、ゆくゆくはうちの伯爵家に婿に来て共に生涯を歩むはずだった。
(まあ、悪い人ではないんだけどね……)
祖父世代の取り決めによって、幼い頃から婚約者同士だった私たちだ。これまでもそれなりに親交はある。
だがそんな彼は、私の義妹のペスカに心底惚れこんだらしい。
そして婚約を解消する為に、自ら私に説明に来たという事なのだろう。多分。
詳しく説明してもらえないので、もうこっちで勝手に推測するしかない。
「お姉さま、ごめんなさい。わたし、気持ちを抑えられなくて……!」
ふるふると震えながら、桃色の大きな瞳を揺らすペスカに、頭が働かない私は対応しきれない。
確かに彼女の柔らかなミルクティー色の髪とまんまるな瞳はとても愛らしく、日々屋敷に篭っている私の地味な姿とは対照的だ。
そういえば前髪を切るのをずっと忘れていたせいで、視界が暗い。いや、これは眠いからなのか。
もう瞼が閉じそうだ。半目になっている自信がある。
きっと大層目つきが悪いだろう。
「……ウーヴァ、あなたの両親が了解しているのならば問題はないはずよ」
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